『世界で称賛される日本の芸術』
(出典:http://www.megurogajoen.co.jp/event/ikebana/)
訪日外国人数過去最高!経済効果3兆円
ニュースでよく聞くようになった中国人の”爆買い” 数年前から銀座でよく見かけるなあと思っていましたが、最近の銀座三越などは本当に中国の人でいっぱいですよね。この間、中国に住む知り合いから聞いたのですが、「ブランドものは日本で買う方が安くて本物だから皆日本で買う」とのこと。なるほどと思いました。
日本に来る中国の人のマナーについて問題になっていますが、度々中国に行っている私から見ますと、日本にきている中国の人はとてもマナーが良いと思います。皆さんもきっと中国に行かれたらわかると思いますよ。詳しくは書きませんが・・
どのくらい外国の人が日本に来ているのかな?と調べてみましたら、2015年、海外から日本へきた外国人の数は 1,974万人になったそうです。下のグラフをご覧いただくとわかるように、この数は過去最高だった2014年を大きく上回り、経済効果(旅行消費額)は3兆円を超えて、過去最高額となっているそうです。
(出典:観光庁)
今年2016年度は更にこの数は伸びると予測されています。
大手旅行代理店「(株)JTB」によると、2016年度の訪日外国人数は2350万人(前年比+19%)に達し、円安基調の継続や日本のイメージアップによる影響から過去最高を更新する見込みだそう。すごいですね。
(出典:(株)JTB)
日本に来たら何をしたい?外国人に人気・盆栽を学ぶ
日本にくる楽しみは食事や温泉、観光地巡りなど、色々あるそうなのですが、最近は日本のゴールデンルートの観光地以外で、日本独自のカルチャーに興味を持ち、様々な場所を訪れる海外の人が増えているのをご存知ですか?
そんな中の一つが盆栽!
盆栽は、私も数年前から本気で習いに行こうかしら??と思っていますが、埼玉県さいたま市の「大宮盆栽」は海外からも大きな注目を受けていて、連日たくさんの外国人が盆栽の魅力に引き寄せられ、大宮(さいたま市)を訪れているそうです。
(出典:大宮盆栽)
大宮で盆栽が盛んになったきっかけは、明治にできた「盆栽村」が始まりです。
江戸の大名屋敷を中心に活躍していた盆栽職人が千駄木の団子坂付近に多く暮らしいたのですが、明治の関東大震災で被害を受け、盆栽作りに適した土地を求めて移り済んだのが大宮で盆栽作りが盛んになったきっかけと言われています。
(出典:http://www.bonsai-art-museum.jp/)
最盛期の1935年頃には約30の盆栽園があったと言われています。
現在、さいたま市北区盆栽町に居を構える盆栽園は7つ。盆栽愛好家の方は、これらの盆栽園からご自分好みの逸品を足で回って買い求められるのでしょう。
そういえば私の大宮在住の知人が、自宅の庭の黒松を庭師さんから「100万で譲ってほしい」と言われたと聞いたことがあります。ずいぶん昔に聞いた話しで、その時は庭の黒松を仕入れ値100万で欲しいと言われることがあるのかと、なんだか不思議に思ったのですが、盆栽が盛んな大宮という土地柄ならではだったのかもしれないと今になってふと思いました。
大宮盆栽という盆栽のブランド化に成功した大宮。2010年には美術館をオープンしています。
(出典:http://www.bonsai-art-museum.jp/)
大宮盆栽美術館は、さいたま市が総合的な盆栽文化を発信するために、2010年に開館した世界で初めての公立の盆栽美術館です。
庭園には、季節に合わせた見頃の盆栽を40-50点ほど展示し、館内では伝統的な座敷にあわせた盆栽の飾り方や盆器などのコレクションを展示しています。
(出典:http://omiyabonsai.jp/ja/museum)
盆栽の魅力と歴史にまとめて触れることが出来る盆栽美術館。盆栽ファンでなくても一度は足を運んでみたいものです。
ワークショップも毎月行われているので、ご興味のある方はぜひ一度訪れてみて下さい。
(出典:http://www.bonsai-art-museum.jp/)
4ヶ国語(日・英・中・韓)対応の音声ガイドもあります。
世界から見たいけばなも人気です
外国人向けクラス
(出典:http://www.ohararyu.or.jp/english/index.html)
盆栽と同じく長い歴史を持ち海外から「和の芸術」と呼ばれて日本に来たらトライしたいと言われているものに「いけばな」があります。
昔から海外に誇れる芸術だった日本のいけばな。
日本にはこれからたくさん海外の人がきます。当協会もタイ、アメリカ、韓国など海外にはスクール加盟校があり(会員様はさらに各国にいらっしゃいます)、2年程前からは海外からのお問合せが多くなってきました。
先述の盆栽や、錦鯉、書道、いけばななど日本の文化は「Cool Japan」として海外ではとても高い人気を誇るので、買ったり勉強したいという外国の方がますます増えてくることでしょう。
先日は香港駐在の奥様が「中国ではとにかくいけばな、いけばなって良く聞きますよ」とおっしゃっているのをお聞きしました。
花や葉、枝本来が持っている美しさを表現するいけばなの世界。日本に古くからあり、長い歴史を持っていますが、日常にいけばなを取り入れている日本人は意外に少ないのではないでしょうか。
東京オリンピックもありますし、私たちもフラワーアレンジだけではなく日本のいけばなについて、しっかり説明できるようにしていきたいですね!
(出典:http://www.ohararyu.or.jp/)
そこで私たち日本人が知っているようできちんとは知らないいけばなの世界をご紹介したいと思います。
いけばなの歴史
いけばなの源流
いけばなは古代より私たち日本人の近くにありました。
古代、花は神の依代でした。民俗学者の折口信夫は「神が天から降りて来られる時、村里には如何にも目につく様に花がたてられて居り、そこを目じるしとして降りて来られるのです。
だから、昔の人は、めいめいの信仰で自分々々の家へ神が来られるものと信じて、目につくやうに花を飾る訳なのです。」「出典:花と豊饒」
花は神様への捧げものであり、または身近において楽しむものであり、時には亡き人に手向けていたことは、今の私たちの生活と変わりませんでした。
(出典:http://miko.ehoh.net/photo38.htm)
仏前供花としての発達
そんな花かざりが、現在私たちが知っているようなスタイルとして確立したのは仏教が渡来し、仏前に備える花が普及してきてからのことです。
(出典:https://ja.wikipedia.org/)
ファンが多い鳥獣戯画。平安~鎌倉期に書かれたと言われている絵巻ものです。猿のお坊さんがカエルの仏さまに御経を上げていますが、蓮の花が供花として描かれていますね。
(出典:http://www.todaiji.or.jp/index/koke/koke.html)
こちらも有名な東大寺の大仏開眼会の様子です。歴史で勉強し覚えている方も多いのではないでしょうか。
大仏様の前、左右に松が生けられているのですが、これは池坊門弟の猪飼三枝と藤掛似水がいけたもので、高さ9mに及んだと言われています。
室町時代に将軍家の座敷飾りを行う同朋衆というお坊さん達がいたのですが、その中から何人かの花の名手が現れるようになります。
同じ時頃、頂法寺池坊の僧侶の中にも、その花の腕前が広く世に知れ渡る人々が現れるようになり、やがて仏前供花からより現代のいけばなに近い形式へと発展するきっかけとなっていきました。
いけばな隆盛の江戸時代
江戸時代には朝廷や大名屋敷を中心にいけばな師が活躍するようになります。
また、様々な文化が発展したこの時代には、武家の子女や富裕町人達に生け花もたしなみのひとつとして受け入れられるようになり、数多くの書物が刊行され様々な流派が起こりました。
(出典:https://www.edo-tokyo-museum.or.jp/)
明治の女子教育
明治維新後、当時はまだまだ低い位置にいた女子教育に力を注ぐことが欧米から求められたのですが、日本の伝統文化のすばらしさに魅了された外国人からの熱心な進めにより、明治政府の政策として、女学校の正課にいけばなが取り入れられたのです。
(出典:http://www.photofair.co.uk/)
日本の伝統文化が広く世界に知れ渡るようになり、日本ブームが起こったのもこの時期です。
(出典:http://www.healing39.com/product/2373)
鹿鳴館やニコライ堂の建築で有名なジョサイア・コンドルの著書。
とはいえ当時、女学校へ行ったり、いけばなを習うことが出来たのは、明治になってもまだまだほんの一握りの富裕層だけでした。
NHK朝の連続ドラマ「あさが来た!」でも、あさの義理の弟に嫁いできたお嫁さんのいけばなの腕前を見て、家族一同が「老舗の大店にふさわしい、おしとやかなお嫁さんが来た」と喜んでいましたね。
(出典:http://d.hatena.ne.jp/yatsugatake/)
明治時代の良家の子女は、花嫁修業としていけばなをたしなんでいたのです。
戦後のいけばなブーム
戦後、高度経済成長期に入って経済が安定し「総中流」と呼ばれる時代に入ると、明治時代からの「良家の子女のたしなみ」「花嫁修業」というイメージの強かったいけばなが習い事として人気を集めるようになりますが、同時に、古い形に縛られない、新しいスタイルが模索されるようになり「前衛いけばな」を各流派が競って発表するようになりました。
いけばなの人気はバブル期まで続きました。当時を知っている先生にお聞きすると「生徒さんがとにかく教室に入り切れなくて、いつも整理券を配っていた」そうです。
今、それほどの人気を長く集めることが出来る習い事というのはなかなかありませんよね。
最近では、伝統的ないけばなのスタイル、ルールに縛られないいけばなのスタイルそれぞれの良い所が学べる流派に人気が集まっているようです。
生け花の流派(日本三大流派)
日本には、三大流派と言われる生け花の組織があります。池坊、小原流、草月流の3流派です。
池坊の花
池坊のいけばなには大きくわけて「立花(りっか)」「生花(しょうか)」「自由花(じゆうか)」の3種類があります。
伝統的な作風「立花」は、厳密な決まり事に沿って1本1本の枝を入れていきます。
「生花」は、立花に比べるとシンプル。家庭の和室に飾って楽しめる伝統的な花です。
現代の暮らしに合わせた「自由花」。
現家元
華道家元 四十五世 池坊専永氏
西洋からカラフルな洋花が多く入ってくるようになった時代に、決まり事のおおかった古典生け花の殻を破り、より自由な花をいけて楽しめる盛花は大変な人気を集め、他流派も次第にこの盛花を取りいれるようになりました。
海外の方に人気の琳派絵画や文人画など、絵画に描かれている花をいけばなにしたり、古典的な決まり事にそっていけるいけばな、カフェなどのインテリアにも使える造形花など、華やかなスタイル、シンプルでスタイリッシュなスタイルなど様々な花形があるのが特徴です。
(出典:http://www.ohararyu.or.jp/)
小原流の花
小原流の花には様々な様式があります。
海外にもファンが多い琳派絵画をモチーフにした「琳派調」は、外国の方に人気です。
和モダンな「文人花」。こちらも海外の方に人気だそうです。
シンプルでスタイリッシュな花をいける「花意匠」。剣山や投げ入れの手法で留めていくいけばなは、オアシスを使わないのでエコだと海外のフローリストから評価されています。
カフェのディスプレイにも使えそうな「造形いけばな」も。
草月では「型」にとらわれることなく、のびやかに花をいけていきます。
日本発という意味でいけばなを冠していますが、その発想は自由で和風とは言えない造形美術的な要素が強い流派です。ウインドーディスプレーや舞台美術などの装飾にふさわしい花を得意とし、いち早く海外交流に着目した流派でもあり、在日外国人の会員が多いと言われています。
(出典:http://www.sogetsu.or.jp/)
草月の花
他流派と異なり、素材が持つ色や形態に着目し、ルールにとらわれず自由に花をいけていきます。
(出典:http://www.sogetsu.or.jp/)
現家元
4世家元 勅使河原茜氏
いけばなの料金
(出典:http://www.megurogajoen.co.jp/event/ikebana/)
いけばなでは、いったいどれくらいの単位数や料金で、免許を取ることが出来るのでしょうか。小原流を参考に調べてみました。
先生になる資格を取るまでのカリキュラムと許状申請料
いけばなには月謝、花代のほかに許状の申請料というものがあります。許状申請料とは何かというと、アレンジメントのディプロマ申請料と同じものになります。この申請を行うことで、一つ上の上級の資格へステップアップすることが出来るシステムです。
さらにこの上にも資格はあるのですが、准教授の資格を取得すると小原流の花を教えることが出来るようになるので、ここまでがひとつの目安と言えそうです。
お月謝は教室により差があるのですが、1単位1000円~2000円位が目安だと思います。月4回(4レッスン)~3回(3レッスン)で月謝が5000円~6000円といったところでしょうか。
まとめると下のようになります。
●合計208,000円(花代含まず)
月謝制の教室の場合、72単位だと2年位の年月がかかる計算になりますね。
最近では単位制の教室も増えているようで、ご主人の海外駐在が決まった主婦の方や、逆に日本に来ている外国の方が、まとめて免許を取得していかれるという話も聞きます。
(出典:http://www.megurogajoen.co.jp/event/ikebana/)
おわりに
これからの生け花
(出典:http://www.megurogajoen.co.jp/event/ikebana/)
数百年という歴史のある華道の世界。
フラワーアレンジとはまた違う日本独特の美しい和の世界は、たくさんの華道家によって磨かれ作られてきました。日本の古き良き伝統は、世界から芸術と称賛され伝わっています。
引き算の美しさを表現する生け花。
日本の美しい花をこうして見ていると、私も背筋をピンと伸ばしていつでも、心をすっきりさせておきたいなあと思います。