京都を訪れたのは今年の5月。新緑がとっても美しい季節でした。なんと、この旅でご縁あって伝統工芸に携わる職人さんたちにお会いすることができ、さらに工房に伺うこともできました。
知っているようで知らない京職人の世界。緑茶を頂きながら、ほお~!と感心したり、質問したり。日本の伝統工芸ってすごいな、かっこいいなあと心から思いました。
お話をお伺いしたのは、古いものと新しいものを巧みに組み合わせた「和モダン」のデザインに挑戦されている細川さん。細川さんが作る竹細工は今銀座の百貨店でも販売されています。
実は今、竹細工の職人はどんどん数が減ってきているとのこと。
理由のひとつは、需要の問題。100均で安い商品が出回るようになり、職人さんが手間暇かけて作り上げる、高価な家庭用品や工芸品を使う家庭はとても少なくなってきたそうです。
でも、実際の作品を拝見してこれがなくなってしまうのはとっても惜しいことだと感じました。
お話をお伺いする中で、撮影もどうぞどうぞ!という許可も頂きましたので、今日は皆様にも素敵な竹細工を見て頂ければ!と思います。
皆様は竹細工というとどのようなものを想像されますか?
料理人の方が使うこんなカゴや・・
(出典:http://www.taketora.co.jp/)
おばあちゃんが梅干しを干していたこんなザルだったり・・
(出典:http://www.taketora.co.jp/)
ほとんどの方が、このようなものを思い浮かべるかもしれません。
こうした昔ながらのお道具というのも良いもので、機会があれば欲しいなぁと思いますが、先述の通り、実際にはどんどん使う方が減っているのが現状とのこと。そんな中、日本の伝統工芸の技術を忠実に守りながら、モダンなデザインでバッグなどを作っていらっしゃるのが京職人の細川さん(竹工房喜節)です。
(出典 http://takekisetsu.blog.fc2.com/blog-category-13.html)
(出典:http://takekisetsu.blog.fc2.com/)
こちらは、細川さんが作られた竹でできたクラッチバック。真田紐というこれまた伝統工芸のヒモを中央にあしらってあるのですが、まるでグログランのようでとても素敵でした。
(出典:http://takekisetsu.blog.fc2.com/)
この工房で竹細工をお作りになっている細川秀章さん
竹工芸(編組)一級技能士、京もの認定工芸士(京竹工芸)という資格をお持ちの細川さん、実は東京出身です!
竹に魅せられ、脱サラして31歳の時に京都伝統工芸専門学校(現大学校)竹工芸専攻入学されたそう。
学生の時に京都金工竹工展・学生部門・京都市長賞受賞をされたのを皮切りに、次々と工芸に関する賞を受賞されています。
どんな風に編むんですか?とお聞きすると、ささっとデモンストレーションをして下さいました!
とても細い竹を縦と横に編み込んで行きます。
使っている竹材。
実はここまでなるのに、大変な時間と労力がかかっています。見ているだけなら、簡単で私も作れそう・・・と思ってしまうのですが、そんなに甘くない世界です。
工房においてあった色々な竹です。青い竹、白い竹、黒い竹など・・
竹工芸に使うのは白竹と言って、写真の中央やや左に写っている状態のものだそうです。
この状態へ持っていくのに、まず青竹を1~2ケ月陰干しし、その青竹に油抜きという処理をしてから、さらに天日干しすることで、ようやく白竹になるそうです。
ちなみに油抜きは、熱を竹に加え、浮いてきた油をていねいにふき取るという作業。あとは白くなるまでひたすら天日に干してようやく完成です。
このように処理をした竹は、青竹に比べて丈夫になり、より長く使うことが出来るそうです。
そうして出来上がった白い丸竹を、細い竹材にしていきます。
この茶色の竹は煤竹。もうめったに見ることのできないアンティ―クの竹です。
古民家で使われていたもので、煤が付き、炭化している部分もあってもろくなっているものではあるのですが、年月によって生み出された味は、人工的に生み出したものでは作れない、深い味わいがあります。
次の作業は「割へぎ」です。
1本の竹を半分にして、それをまた半分にして、そのまた半分に、と繰り返し、細い1本の竹材にしていきます。これがまた細川さんは簡単にやっているのですが、実はこれができるようになるまで何年もかかり、この作業が竹細工の良しあしを決めるので、誰かに委託したりすることは絶対に出来ないそうです。
実は、わたくし、この細い状態の竹が売っているのだと思っていました・・・・。やっぱり一から作るのですね。すごいなあ。
さらに厚さを均一に整える為に、作業台の上でならして行きます。
この作業台に使っている「丸太」これを私は「雰囲気」が良いから使っているのかと思っていたのですが、実はこの竹の作業をするのに、この丸太は合理的かつなくてはならない作業台だったのです。
丸太に竹をはめ込んでならしたり、竹を差し込んで作業をしたりと「丸太」であることが竹細工の作業をしやすくしているとのこと。
この作業をすべての竹材に対して行い、その後、染漆作業を行って出来上がったのが、こちら。
その竹で編んだのが、上でご紹介したクラッチの染漆バージョンです。
竹材作りは含まず、編み上げるだけで6日かかるというこちらのバッグ。
ちなみにお使いの真田紐は、京都で唯一手織りで織っている「江南」さんの正絹の真田紐だそうです。
画像で見ると、簡単に紹介できてしまうのですが、本当はとても手間暇かかった作品です。細川さんは最初内側のバッグ部分の知識がなく、独学でバッグの研究をされたそうです。
使いやすいバッグはどんな構造になっているのか?内側の仕切りに使うものはどんなものが良いのか?
竹細工だけを極めるだけではなく、今のニーズに合わせてお客様に買って頂けるためにはどうしたら良いのか。
竹細工職人としてのプライドや技術を受け継ぎつつ、その代価に見合うデザインとして、和モダンのバッグを考案した細川さん。
プロってこういうことだなあと心から思いました。自分が作りたいものを作っているだけでは仕事にならなくて、作品を買って頂けてはじめてその作品が昇華されて。
古き良きものを受け継いで、さらに新しい時代へと変化させていくことの難しさは想像以上のことだと思いますが、ひとつのことを極めつつ、革新的な挑戦をしている姿は本当にカッコいい。細川さんの話を聞きながら、心がしびれてしまった京都の5月でした。
竹工房 喜節
〒602-8158
京都市上京区下立売通千本東入下る
中務町486-66
http://takekisetsu.blog.fc2.com/
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