じゃがいもの芽は食べない、毒キノコに気を付けるなど、一部の植物に毒が含まれていることは知っていても、「え?あの花って毒なの」と、花の毒性については意外と知られていません。でも実は普段から身近によくある花に猛毒が含まれていることもあるのです。
(有毒成分)シュウ酸カルシウム
大好きな人も多いカラー。このカラーを食べると、口と喉が炎症を起こして腫れ上がり、窒息したり、大量に摂取すると呼吸困難などで昏睡や死亡にいたることも。パイナップルを食べた時に口がヒリヒリするのもこのシュウ酸カルシウムが原因です。
またシュウ酸カルシウムはヒヤシンスにも含まれます。カラーに毒があるなんで、ちょっと意外ではないですか?
(有毒成分)ツリピン
これもまたびっくりですが、ツリピンを全ての部位に有毒成分が含まれています。皮膚につくと皮膚炎、食べるとおう吐や血圧降下や呼吸困難を引き起こすことも。ただし毒性は弱いのです。皮膚の弱い方などは注意しましょう。
(有毒成分)プロトアネモニン
春になると花屋さんの店頭に並ぶアネモネ。全部位に毒成分「プロトアネモニン」が含まれています。茎から出る汁液が皮膚炎、水泡、化膿を引き起こすこともあります。
プロトアネモニンが含まれる花には「キツネノボタン」「オダマキ」「クレマチス」などがありますので、こちらも注意が必要です。
(有毒成分)コンバラトキシン、コンバロサイド、コンバラトキソール、コンバラリン、コンバラマリン、ロデアサポゲニン、セリドニン酸
毒があることでは比較的有名なスズラン。その毒性が思いの他高く、致死量は青酸カリの15倍もの強さがあるそうです。基本的に肌の弱い方は全部位素手で触るのはやめておいた方がよさそう。
(有毒成分)ヘレブリン、サポニン、プロトアネモニン、ラヌンキュリン
こちらも大好きというファンが多いクリスマスローズ。このクリスマスローズという呼び名は最近ついたもので、学名はヘレボラスニゲラと言います。この学名のHelleborus niger、直訳すると「殺す食べ物」になるそう。ヨーロッパでは矢にヘレボラスの毒を塗り狩猟をしていたそうです。
ヘレブリンは嘔吐、腹痛、下痢、けいれん、呼吸麻痺、めまい、心拍数の低下、心停止などをひき起こし、ラクンクリンが皮膚につくとただれたり腫れたりします。
(有毒成分) アルカロイド
庭木として良く見かけるエンジェルストランペット。天使のラッパみたいな花の形が印象的ですが、茎・葉・花・根の全てに強毒が含まれるので注意が必要です。「フグ」の毒で有名なテトロドキシンもアルカロイドです。ダチュラにはこのアルカイドが高濃度に含まれています。
(有毒成分) アルカロイド(コルヒチン)
ダチュラと同じアルカイドを強く全ての部位に含みます。アーユルベーダでは、球根を蛇にかまれた時の薬に用いるそうです。
(有毒成分)リコリン
毒があることでこちらも有名なヒガンバナ。全草に毒が含まれますが、茎や花には比較的毒は少ないと言われています。有毒成分のリコリンもアルカロイドです。ヒガンバナの毒は、皮膚炎、呼吸不全、痙攣、中枢神経麻痺、嘔吐、下痢などを引き起こします。
リコリンが含まれる花には、他にアマリリスやスイセンもありますが、食べたりしない限り、触って程度では肌がよほど敏感な方で無い限り大丈夫です。
(有毒成分)ジギトキシン
別名フォックスグローブ(キツネのテブクロ)というかわいい名前を持つジギタリス。イングリッシュガーデンには欠かせない花の一つです。
近代には強心剤として使用されていましたが、今ではジギタリスから直接、薬効成分を取り出すことはないそうです。
有毒成分のジギトキシンは誤って大量に摂取すると食欲不振、吐き気、下痢、動悸、脈の乱れ、視覚異常などを引き起こすことがあります。
日本に広く自生したり、流通している毒のある花。事件や事故も起こっています。
(有毒成分)オレアンドリン
乾燥や大気汚染、潮風や煙害にも強い為、街路樹や砂防などで良く使われていて、夏にかわいらしい赤紫の花を咲かせます。キョウチクトウは全部位に、青酸カリを上回る猛毒「オレアンドリン」を含んでいます。周辺の土壌や木を燃やした際に出る煙にも注意が必要です。
このように、大気汚染に強いことから高速道路などにも植樹されているのですが、東名高速道路の工事の作業員の方が昼食の際に、近くにあったキョウチクトウの枝を箸がわりにして亡くなるという事故が起こっています。
同じように、近くにあった夾竹桃をバーベキューの串に使用して、フランスでは10名中7名が、オーストラリアでは11名中10名もの方が亡くなる事故が起きています。火にかざした熱でオレアンドリンがより大量に沁み出し、バーベキューの食材に染み込んでしまったことが原因と言われています。
(有毒成分)アルカロイド(アコニチン)など
トリカブトを使った事件として有名なのが1986年に起こった「トリカブト保険金殺人事件」です。妻をトリカブトの毒を使って殺害し、保険金を受け取ろうとした事件で、2000年に有罪(無期懲役)が確定しています。
トリカブトは日本に自生する秋に紫色の美しい花を咲かせる植物です。誤飲しない限り、アルカロイドを怖がる必要はなく、切り花としても流通していて、秋の風情を感じさせる花として人気があります。
ちょっぴり怖い花の毒性についてご紹介いたしました。アネモネやカラー、チューリップなど身近な花にも毒が含まれているというのは意外と知られていないと思います。
触るだけでも肌が荒れる「ウルシ」のような植物もありますが、日本人は昔からこうした毒がある植物や花ともうまく付き合ってきました。怖がるだけでなく、正しい知識を身に着けて、お花を楽しんでいきたいものですね。